【保存版】不登校支援の具体的な考え方とは?子どもの未来が決まる最終目標を解説!

「我が子が不登校になったらどうしよう…」

子どもが学校に行きたがらないとき、昭和時代であれば「とにかく学校に行きなさい!」と保護者に言われるのが当たり前の時代でした。

しかし、2016年に成立した普通教育機会確保法により具体化する文書等が出され、これまでの「学校復帰」をめざす不登校支援の具体的な考え方や最終目標が大きく変わりました。文化省通知の内容からも「学校復帰」の文字が削除されるなど、不登校の子どもや保護者への支援の変化が生まれています。

今回の記事では、不登校支援で変化した具体的な考え方や最終目標について解説します。

不登校支援とは?

不登校支援とは、学校に通うことが難しい子どもや、その保護者をサポートする取り組みのことです。不登校の原因はいじめや勉強の不安・家庭の問題など、子どもによって違います。また、自閉症や学習障害など、発達障害によって不登校になる場合もあります。そのため、一人ひとりに合った支援が必要です。

子どもの未来を考え、最終目標は社会的自立を目指しています。無理に登校を促さず、子どもの気持ちを尊重して行政や民間の支援を受けることで、不登校の克服にもつながるでしょう。

不登校支援の具体的な考え方5選

2019年10月25日の文化省通知で大きく変わった不登校支援の具体的な考え方は、以下の5つです。

  • 学校を休むことは必要だ
  • 不登校は問題行動ではない
  • 最終目標は学校復帰ではない
  • 「場所」より「何をどのように」学ぶのかが大事
  • フリースクールや親の会の情報を保護者に伝えよう

順番に、解説していきます。

学校を休むことは必要だ

2016年12月に成立した普通教育機会確保法の中で、不登校の子どもに対する「休養の必要性」が明記され、学校を休んでも必要な支援が受けられるようになりました。

これまでは、登校日数が増えるようにする対応が主でした。今後は、不登校の子どもの状況にあった多様な学びができるように支援されなくてはなりません。

「学校以外の場」とは、教育支援センターやフリースクールだけでなく、自宅も含まれます。

不登校は問題行動ではない

「いじめ」は解決して、無くさなくてはならない問題行動ですが、不登校は治したり克服したりするような問題行動ではありません。個性をもった一人ひとりの子どもが、学校に行く行かないを選んでいます。

また、不登校は「どの子にも起こり得る」ことで、子どもの性格や親の育て方が原因とはいえません。

最終目標は学校復帰ではなく「社会的自立」

子どもが不登校を始めると、一歩でも教室に近づくような対応がなされてきました。それで元気になる子どもがいる一方で、追い詰められる子どももたくさんいました。

これからは、おとなが良いと思う方向に導くのではなく、子どもの自己決定が大切にされなくてはなりません。

また、教育支援センター(旧適応指導教室)でも、その設置目的から「学校復帰」の言葉が削除されました。

「場所」より「何をどのように」学ぶのかが大事

不登校の子どもが「学校復帰」をめざしていなくても、教育支援センターやフリースクールで学んでいる日を校長判断で出席扱いできるようになりました。また、自宅でICT等を使って学習を行った場合の出席扱いも可能です。

こうした出席扱いの変化は、「どこで学ぶか(場所)」ではなく、「何をどのように学ぶか」が大事であることを意味しています。

フリースクールや親の会の情報を保護者に伝えよう

これまでの不登校児童の支援・相談機関の情報といえば、教育支援センターやスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが主なものでした。しかし、フリースクールや親の会には、そうした機関とは別の魅力と機能があります。

教育委員会や学校は、民間団体とも連携しながら情報収集を行い、リーフレット等を作成するなどしてその情報を広く伝えることが求められます。

不登支援は行政・民間の支援サポート連携

普通教育機会確保法やそれに関連する通知等が周知されたところでは、これまでには考えられなかった変化がおきています。全国あちらこちらで生まれた行政・公的機関と不登校を考える民間の支援サポート「親の会」の連携について紹介します。

会議や懇談会

これまでは声がかからなかった教育委員会主催で開く「不登校の支援推進会議」(仮題)に、民間支援サポートである親の会やフリースクールの関係者が呼ばれる事例が増えています。

また、フリースクールの理解を深めるために視察をする行政や学校関係者や議員が増えています。双方の理解を深めるために、親の会のほうから「保護者に親の会のことを情報提供するためにも、もっと親の会のことを知ってほしい」と教育委員会や教育支援センターに申し入れることで、連携を目的とした懇談会が気軽に開かれています。

研修や講演

スクールカウンセラーやSSW(スクールソーシャルワーカー)・教育相談コーディネーター・教育支援センターの研修会の講師として、親の会やフリースクールの関係者に声がかかる事例が増えています。

教育支援センターの整備・充実

東京都世田谷区では、行政が施設を設置し、運営はフリースクールが行う公民協営型の教育支援センターができています。不登校の子どもや保護者のニーズに沿った運営がなされ、喜ばれています。

情報提供の例4選

地域の行政・民間の連携によって、不登校に対する情報を学校や子供をもつ保護者に情報提供しています。教育委員会を中心としてリーフレットを作成して配布するなど、今回の記事では4つの地域で行われた具体的な内容を紹介します。

大分県の教育委員会

大分県の教育委員会が作成した不登校の支援・相談機関の情報を紹介するリーフレットには、フリースクールや親の会などの民間団体も掲載されています。

作成したリーフレットは、大分県内全ての公立学校に配布されました。

函館市の教育委員会

函館市の教育委員会が作成した不登校の支援・相談機関の情報を紹介するリーフレットには、フリースクールや親の会などの民間団体も掲載されています。

函館市内の公立小中学校に通うすべての子どもの保護者に配布されました。

みやぎネットワーク

「多様な学びを共につくる・みやびネットワーク」が作成したリーフレットには、フリースクール・親の会等の民間団体と教育支援センター等も掲載されています。

宮城県の教育委員会と仙台市の教育委員会の協力のもと、県内すべての小中学校や公民館に配布されました。

親の会主催の講演会

教育委員会の「後援」が認められた親の会主催の講演会のチラシを、教育委員会を通して全ての学校に紹介した事例も数多くあります。

不登校の子どもに対する最新の法律や要領

普通教育機会確保法が成立し、具体化する文書等が出されて、これまでの「学校復帰」をめざさせる不登校の支援のあり方が大きく変わりました。不登校支援の流れや変化は、根拠となる文書で確認することができます。

  • 普通教育機会確保法【第13条】
  • 学習指導要領 総則3章-4 節-2-(3)-①
  • 文化省通知<令和元年10月25日>

今回の記事では、代表的な文書3つについて紹介します。

普通教育機会確保法【第13条】

国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性を鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることになるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。

学習指導要領 総則3章-4 節-2-(3)-①

不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得ることとして捉える必要がある。また、不登校とは、多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはならない。

加えて、不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢をもつことが児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要である。

文化省通知<令和元年10月25日>

不登校児童生徒の中には、学校外の施設において相談・指導を受け、社会的な自立に向け懸命の努力を続けている者もおり、このような児童生徒の努力を学校として評価し支援するため、我が国の義務教育制度を前提としつつ、一定の要件を満たす場合に、これらの施設において相談・指導を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができることとする。

保護者・支援者・教師・関係者の声

不登校支援に対する具体的な考え方の変化にともない、さまざまな立場の声が上がっています。

保護者以前は、先生から「とにかく、学校に連れてきてください」といわれていました。今では、そうした登校圧が減って楽になりました。
SSW(スクールソーシャルワーカー)学校の理解もあり、保護者に親の会の情報を気軽に紹介してくれます。
養護教諭以前は「保健室が甘いから、いつまでも教室に来ない」と嫌味を言われることがあったけど、今はそういうことを言う先生は少なくなりました。
教師親の会主催の講演会などの情報が、学校に届くようになりました。保護者に伝えて一緒に参加しています。
行政職員不登校会議の案内を民間団体にも出しています。顔見知りになり、連携が進んでいます。また、当事者目線の意見を聞くことができて、出席者に大きな気づきがあります。

全体的には、良い方法へ進んでいるようです。

まとめ

今回の記事は、不登校支援の具体的な考え方や最終目標について解説しました。

一昔前の「学校復帰」が見直され、2016年に普通教育機会確保法が成立してから、文化省通知の内容からも「学校復帰」の文字が削除されるなど、大きな変化が見られます。

不登校はいじめと違って、問題行動ではなく、行政や民間の支援を受けることで社会的自立を目指すことが可能です。

不登校はどの子でも起こり得ます。全国で展開されるようになった「行政と民間との連携支援」で、生まれ変わった不登校支援の考え方について、理解しておくことが大切です。